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原因
脂肪が分解する過程で脂肪酸がカルシウム塩の形で沈殿し、その後、生じた沈殿物が異物として作用する結果、反応性の結合組織形成へと発達したものです。
腹腔内脂肪組織のうち、特に円盤結腸、直腸、腎周囲の脂肪組織が変性壊死を起こし、硬い腫瘤を形成します。
最も関与が疑われているのは若齢期(子牛~育成期)からの濃厚飼料の多給です。
血統や育成期の太り過ぎが要因と考えられています。
症状・特徴
黒毛和種の肥育牛や繁殖牛に多く発生し、乳牛ではまれです。
腫瘤のできた場所によっては腸管を狭窄したり、子宮を圧迫したりして、二次的に消化器症状や流産を引き起こす場合があります。
発症初期や重症例以外は食欲不振や軽度の下痢程度しか示さず、無症状のまま経過する牛もおり、直腸検査時にはじめて発見される場合も多いです。
農家さんの手当
発症の前提条件として肥満に伴う脂肪の蓄積がありますので、適切な飼養管理を行って肥満を避けることが必要です。
獣医師の治療
直腸の内腔が狭窄しているなど症状が進行している場合は治療対象とはなりません。初期段階で症状が軽度であれば、次のような治療を行い経過を観察します。
ヨクイニン末の投薬:1日200〜300g×3〜5日を1クールとし10日間隔で繰り返します。
コリン製剤の給与:ルーメンバイパスコリンの混合飼料(リーシュア60〜120g/日、スターコール20〜50g/日など)を3〜10週間程度給与します。
植物ステロール(フィトステロール)とイソプロチオランは脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制し、牛を痩せさせるため肥育牛に与えることはできない。
黒毛和種では多孔質の黄土粘土(ウキシン,㈱祐佳クレイ)の飼料添加(10~30か月齢時に50g/日)が予防に有効であると報告されています。
参考文献
- 加藤敏英:脂肪壊死症,テレビドクター4よく分かる乳牛の病気100選,デーリィーマン社,北海道,92-93(2019)
- 岡章夫:牛の脂肪壊死症に関与する要因と予防法,家畜診療,64(8),441-448(2017)
- 片本宏:牛の脂肪壊死症の成因と対策について考える,家畜診療,515-521(2009)
- 元井葭子:Ⅳ.エネルギー・蛋白質代謝障害,7.脂肪壊死症,生産獣医療における牛の生産病の実際,文永堂出版,東京都,84-89(2000)
- 小林正人:第11章 代謝性疾患,3.脂肪壊死症,子牛の医学,緑書房,312-313(2014)
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