哺乳子牛の第四胃鼓脹症

原因

給与したミルクの第四胃内における異常発酵であり、ミルクの一回給与量と温度が発生誘因となります。

症状・特徴

全乳あるいは代用乳を給与して数時間以内に突発的に発症し、第四胃鼓脹に伴う著しい右側腹囲の膨満、右側下腹部における第四胃拍水音と第四胃ピング音の聴取、腹痛、食欲廃絶、眼球陥没、心拍数の増加、排便停止といった症状が見られます。

農家さんの手当

1回のミルク給与量を2.5L以下に制限し、成長に伴うタンパク質の必要摂取量を人工乳で補うことが推奨されています。
代用乳に0.1%の割合でホルマリン液を添加すると予防効果があります。

獣医師の治療

軽症例:血清BUNが50mg/ml以下の場合は、18Gの針を穿刺し第四胃内のガスを除去した後、抗菌剤(クロラムフェニコール0.5~1.0g)を第四胃内に注入し、抗胃潰瘍剤(塩酸セトラキサ-ト1~2g/日/BW50kg)を経口投与します。必要に応じて脱水と電解質の補正を目的とした輸液を行います。


重症例:輸液により血清BUNが50mg/ml以下に下がらず、電解質異常が改善されない場合は外科的処置を行い第四胃内容物を除去します。外科的処置後の経過は比較的良好で高い治癒率が得られます。処置後7~14日間は抗胃潰瘍剤、胃運動改善オピアト作動薬(20%マレイン酸トリメブチン)、炭素木酢製剤、複合胃腸薬、生菌剤を経口投与します。

参考文献

  1. 小岩政照:第6章 消化器疾患 第4節 消化器の疾患 7.第四胃鼓脹症,子牛の医学 胎児期から出生・育成期まで,緑書房、東京,224-226(2014)
  2. 小岩政照:第3章 哺乳期の生理と管理 第7節 哺乳期の失宜と疾病 2.哺乳子牛の第四胃鼓脹症,子牛の科学 胎子期から出生,育成期まで,緑書房,東京,146-148(2009)
  3. 曽我久征ら:腹囲膨満を主症状とする子牛の胃疾患に対する治療法の検討,家畜診療,49(7),433-438(2002)

最終更新日:2022.1.22

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