迷走神経性消化不良

原因

迷走神経性消化不良は消化管の運動に関わる迷走神経が障害を受けることで胃の内容物が下部消化管に送り出せない病態です。迷走神経の障害が明らかでないものでも同様の症状を示すものはこの病名が使われます。
迷走神経性消化不良は大きく二つに分類されます。
前方の機能的狭窄:第二胃・第三胃口の移送障害。創傷性第二胃炎、第二胃第三胃周辺の癒着や膿瘍、腹膜炎などによる神経的もしくは機能的障害、第二胃・第三胃口の物理的障害が原因となる
後方の機能的狭窄:第四胃幽門部の流出障害。第四胃捻転による第四胃壁の傷害による移送障害、穿孔性第四胃潰瘍、第四胃変位、妊娠末期の子宮による第四胃の位置の異常が原因となる。

症状・特徴

特徴的な症状は数日から数週間かけて起こる進行性のパップルシェイプと呼ばれる腹囲膨満です。牛のお腹を後方から見て左側がリンゴ、右側が洋ナシのように膨れます。食欲不振、糞量の減少、乳量の低下、脱水、進行性の削痩が見られます。

前方の機能的狭窄の場合は第一胃運動は亢進し、蠕動音は低く絶え間ないものになり、第一胃内容は泡沫状になります。

後方の機能的狭窄の場合は第四胃内容が滞り第一胃へ絶えず逆流するため第一胃内容は液状になります。第四胃内容の移送障害であるため、脱水や電解質の異常が重度で代謝性アルカローシス、低Cl血症ならびに低K血症を起こすことが一般的に考えられるが、実際は症状の進行が緩慢であるため、著しい脱水や電解質異常は生じないとされています。

農家さんの手当

進行性の腹囲膨満が見られた場合は獣医師の診察を受ける必要があります。

獣医師の治療

迷走神経性消化不良の原因は様々で、消化管や周辺組織に器質的障害がない場合は治癒の化膿性もありますが、多くは器質的障害があり治癒困難と考えられます。

参考文献

  1. 大脇茂雄:迷走神経性消化不良,テレビドクター4 よくわかる乳牛の病気,62-63
  2. 片本宏:迷走神経性消化不良を疑った黒毛和種子牛の一例,臨床獣医,(5),28-30(2018)
  3. 和田恭則:ワンポイント質問 迷走神経性消化不良の発病機序と病態,家畜診療,59(10),646-647(2012)

最終更新日:2022.2.1

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